質問「なぜ金価格が下がっているのか?」の深層心理。「上がるべき」という謎の自信

「なぜ金価格が下がっているの?」

 金価格が下落していると、社内でしばしばこの質問を受けます。たいていその時、質問者は「金価格が上昇するべきだか、下がっている。なぜなのか…?」という、イメージと価格動向の不整合に苛まれています。

「こんなに有事なのに、なんで金は下がっているんだ!?」とやんわりと語気を荒げる人や、「この金価格の下落に一言もの申す!」的な雰囲気を帯びている人は珍しくありません。むしろ、このような方の方が多いくらいです。(筆者としては全く問題なく、むしろ大歓迎です)

 質問者の多くは自信満々なのです。頭の中に「金価格が上昇するときはこんな時だ。間違いない」という、ゆるぎないイメージ(自信)を持っています。そこまで金相場に強い思い入れを抱いていただいているとは、非常に心強い話なのですが、それにしても、そのゆるぎない自信を獲得したのはいつだったのだろうか? とふと、考えさせられます。

 あからさまな「有事=金価格上昇」が発生した1970年代後半でしょうか? 主要国で不動産や株式市場でバブル崩壊が散見された1980代後半から1990年代後半にかけてでしょうか? 少なくとも材料の多層化が顕在化したこの10年以内ではないでしょう。やはり、「有事と言えば金高」、「株安と言えば金高」などが合言葉だった30~40年前なのではないでしょうか。