2.セグメント別動向(2020年3月期2Q、2020年3月期、2021年3月期)

1)ゲーム&ネットワークサービス

 2020年3月期2Qは、売上高4,544億円(前年比17.4%減)、営業利益650億円(同28.3%減)となりました。PS5発売が2020年年末商戦(おそらく11月下旬からクリスマスまでの間)と決まったため、PS4ハードの買い控えが起き、PS4ハード販売台数は前2Q390万台、今2Q280万台と減少しました。

 ゲームソフト売上高も2,556億円(同19.4%減)と減収になりました。2018年4月発売で1,000万本以上の大ヒットとなった「ゴッド・オブ・ウォー」(ソニー製)や、2018年9月発売の「マーベルズ・スパイダーマン」(ソニー製。これまでの販売本数は1,300万本以上)、サードパーティのソフトですが、これも大ヒットとなったフリー・トゥー・プレイ(アイテム課金)ソフトの「フォートナイト」(エピック・ゲームズ)の反動がありました。

 ネットワークサービスは、844億円(同11.0%増)と増えましたが、ハード、ソフトの減収を補えませんでした。

 会社側は2020年3月期通期見通しを下方修正しました。前回予想は売上高2兆2,000億円(同4.8%減)、営業利益2,800億円(同10.0%減)でしたが、今回予想は売上高2兆円(同13.5%減)、営業利益2,400億円(同22.9%減)となりました。主な下方修正要因は、PS4用ソフトの「ザ・ラスト・オブ・アス・パートⅡ」(ソニー製)の発売が2020年2月21日から2020年5月29日に延期されたことです。期待の大型新作ですが、発売は来期となります。

 また、PS4やパソコンなどでテレビドラマや映画を視聴できる配信サービス「プレイステーションビュー」を2020年1月30日付けで終了します。2015年に北米で始まりましたが、年間約200億円の赤字を出し続け、ネットフリックスやHuluとの競争に敗れました。この撤退は会社予想業績に織り込み済みとのことです。

 2021年3月期は、楽天証券では、売上高1兆6,000億円(前年比20.0%減)、営業利益1,600億円(同33.3%減)と予想します。

 2020年11~12月にPS5が発売される予定ですが、まだ価格が決まっていません。従って、どの程度の台数が売れるか予想できないため、今回の業績予想には織り込んでいません。ただし発売初期ですから、PS5発売後はPS5が売れた分とPS4が売れなくなる分が相殺すると思われます。そのため、今回の2021年3月期のゲーム&ネットワークサービス事業の業績予想はPS5発売によって大きく変動することはないと今のところ考えています。ただし、PS5ハードの価格は、売れ行きに直接関わるため、2022年3月期には重大な影響を与えると思われます。

 当面は、2021年3月期、2022年3月期がPS4からPS5へ移行する際の端境期になると思われます。ソニーの新たな競合相手としてグーグルの「Stadia」(クラウドゲームサービス、2019年11月に欧米でサービス開始)が台頭する可能性がありますが、その脅威がどの程度のものかは、PS5が発売されて1~2年たたなければはっきりしないと思われます。

グラフ1 ソニー・ゲーム&ネットワークサービス事業の売上構成

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ2 ソニーのゲームサイクル:プレイステーションの販売台数

単位:万台、
出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

2)音楽

 今2Qは、売上高2,193億円(前年比7.6%増)、営業利益375億円(同19.0%増)となりました。前期に行ったEMI買収による増収効果、ストリーミング配信の増加による音楽制作の増収が寄与しました。スマホゲーム「Fate/Grand Order」の課金売上高が含まれる「映像メディア・プラットフォーム」は前年比では減収でしたが、今1Q比では増収となりました。夏のイベントが課金売上高の回復に貢献したもようです。

 世界的なストリーミング配信の増加がソニー音楽事業にも寄与しており、会社側は音楽事業の今期見通しを、前回の売上高8,300億円(同2.8%増)、営業利益1,350億円(同41.9%減)から、今回は売上高8,500億円(同5.3%増)、営業利益1,400億円(同39.8%減)へ小幅上方修正しました。なお、2019年3月期の営業利益にはEMI買収に伴う持ち分再評価益1,053億円が含まれています。これを除くと2019年3月期営業利益は1,272億円となり、今期は実質増益となる見込みです。

 2021年3月期もストリーミング配信の増加が音楽事業にプラス寄与すると予想されます。ただし、「Fate/Grand Order」がゆっくりと減収になると思われるため、営業減益と予想します。

グラフ3 ソニー・音楽事業の売上構成

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成

3)映画

 今2Qは、売上高2,606億円(前年比8.2%増)、営業利益393億円(同67.2%増)となりました。主に、2019年7月公開の「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」(今2Qの興行収入は全世界11億3,100万ドル)、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(同3億5,600万ドル)が貢献しました。

 今期会社予想は、前回の売上高1兆800億円(前年比9.4%増)、営業利益650億円(同19.0%増)から、今回の売上高1兆300億円(同4.4%増)、営業利益700億円(同28.2%増)へ上方修正されました。2019年12月の「ジュマンジ:ザ・ネクスト・レベル」が期待されるほか、一部の映画作品の公開が延期になるため、広告費が予定よりも減る見込みです。また、番組配信のメディアネットワーク事業が順調です。

 来期も、2020年4月公開予定の「ピーター・ラビット2」など有力作品が控えています。また、これまでに「スパイダーマン」などの大ヒットがでたため、配信権販売などの2次ビジネスが増加すると思われます。持続的な成長が予想されます。

 なお、「スパイダーマン」映画はディズニーの大物プロデューサー、ケヴィン・ファイギ氏がプロデュースしてきましたが、今年8月にディズニー=ソニー・ピクチャーズ間の収益配分を巡る交渉が決裂し、「スパイダーマン」次回作からディズニーがプロデュースしなくなると報じられました。ただし、その後両社は再交渉したもようで、これまでの収益配分条件に対してややディズニーに有利な条件で決着したもようです。その結果、ケヴィン・ファイギ氏は引き続き「スパイダーマン」映画のプロデュースを行うことになるもようです。